論文とレポート


レポート 地域金融機関のめざすべき「顧客本位」とは

全国金融共闘と金融労連は、毎年金融庁への要請を行い、金融のあるべき姿を問い質しています。昨年秋の要請行動(11月15日全国金融共闘 12月13日金融労連)では、特に地域金融機関の経営を困難にしているマイナス金利政策や、地域金融機関の合併・経営統合に対する独占禁止法の規制緩和、店舗の統廃合・ブランチ・イン・ブランチなど、地域金融機関の基本的なあり方を問い質されました。金融庁はマイナス金利政策については、貸し出しの増加につながっているなど肯定的な評価を示し、地域金融機関の経営困難は人口減少など様々な要因によると回答。「顧客本位の業務運営」について、地域金融機関労働者から、地域社会の住民全体に対する「顧客本位」を問い質されたたことに対して、資産形成=金融商品の販売における「顧客本位」が説明されるだけで終わりました。そこで明らかになったのは、マイナス金利政策はアベノミクスの3本の柱の筆頭の「大胆な金融緩和政策」、その具体化としての「異次元の金融緩和」の一環であり、それを前提として金融行政が進められているということです。それ故にこそ、すでに実践的にも破たんが明らかな貨幣数量説にしがみつく金融政策の弊害を、金融労働者が明らかにして追及することの意義が確認されます。「顧客本位の業務運営」に対する、金融庁と金融労働者の認識の食い違いは、金融ビッグバン以降、金融行政が進める「貯蓄から投資へ」という金融のあり方の根本にかかわる政策と、地域経済全体の好循環を目指し「地域あっての地域金融機関」を求める現場労働者との違いです。ここで浮かび上がった食い違いをふまえ、地域金融機関はどうあるべきか、金融労組からのさらなる発信が求められます。

レポートを開く 地域金融機関のめざすべき「顧客本位」とは (2020年1月11日up)


調査レポート 電子交換所設立とメガバンクリストラ

全国銀行協会(全銀協)が「電子交換所」の設立を決定し公表しました。これは、政府が「未来投資会議17」で金融や政府機能などの電子化=デジタライゼーションを一段と加速する方針を受けたものです。全銀協は「手形・小切手機能の電子化に関する検討会」で検討を進め、2018年12月に「報告書」をまとめました。そこでは、最終的には紙ベースの手形・小切手をなくすとし、中間目標として、2023年までに6割を電子化するという目標を設定。その時点で4割残る手形・小切手はイメージデータとして読み込み、設立する電子交換所に送信処理するという計画です。政府は「世界最先端デジタル国家宣言・官民データ活用推進基本計画」を策定するなど電子化・デジタライゼーションを加速しようとしていますが、各種審議会の議論はIT新技術導入は生産性向上をもたらすという議論で埋められています。それは、民営化が生産性向上の原動力とされ民営化してはならないものまで民営化してきた流れと共通しています。電子交換所の設立計画に対して、金融労働運動はそこに働く労働者と手形小切手を利用してきた中小企業者になのをもたらすのかの視点から取り組むことが求められます。

調査レポートを読む 調査レポート 電子交換所設立とメガバンクリストラ(2019年8月18日up)


日本IBMのロックアウト解雇裁判すべて勝利

日本IBMは、企業が自らを「リストラの毒見役」と称し、会社の一方的な評価による「業績の低い労働者」を退職に追い込み、あるいは解雇することを「新陳代謝を進める」と強弁し、それと真っ向からたたかう労働組合JMITU日本IBM支部の弱体化をはかり、ロックアウト解雇を強行するなど日本の労働法を全く無視した攻撃を行ってきました。この日本IBMに対して、真正面からたたかってきた日本IBM支部の勝利解決報告集会が9月1日、東京都内で開かれ、原告や支援の仲間250人が参加。解雇争議の勝利を喜び合うとともに、組合員資格問題、賃金減額問題など、引き続くたたかいの勝利と強大なJMITUをめざす決意を確認し合いました。このたたかいの到達点は、全世界規模でリストラを行うIBMグループに対するたたかいとしても重要な意義を持つものです。日本IBMは日本で「リストラの毒見役」を自任して日本の労働法無視の攻撃を行っていますが、これはIBMグループのグローバル戦略と軌を一にするもです。IT産業は常に変化していく。変化を続けることがビジネスモデルであるとして、労働力の不断の「新陳代謝」=労働者の日常的な入れ替えを当然視し、その結果として労働者の犠牲を顧みない経営戦略。この究極の「株価至上主義」に対してJMITU日本IBM支部のたたかいは大きな意義を持つものです。

勝利報告集会報告を開く。 ロックアウト解雇裁判すべて勝利(2018年10月11日up)

金融共闘機関誌「金融のなかま」関連記事 「金融のなかま」IBM裁判関連記事(2018年10月11日up)

ネットワークニュースNo6を開くhttps://finlabor.net/wp-content/plugins/download-monitor/download.php?id=101


JMIU(JMITU)三木氏の報告と金融労働運動の課題 田中均

金融機関の雇用構造が大きく変化しました。その変化は、業態によって一様ではありません。メガバンクの雇用構造が激変したことは当金融・労働ネットワークでも繰り返し指摘してきました。地方銀行でも大手銀行は正規従業員が大幅に減り、非正規雇用に置き換えられていますが、中・下位行や信用金庫では非正規雇用への置き換えが大手行ほど進んでいません。しかし、金融産業において2000年代に入って、正規雇用労働者が激減し非正規労働者が劇的に増加したことは明らかです。このとことは、正規雇用、非正規雇用合わせて金融産業に働く労働者の労実態だけではなく、企業意識にも大きな変化を生み出しています。メガバンクのリストラ計画が報じられ、店舗の統廃合、フィンテック技術を活用した銀行窓口へのアクセス経路の改革等々が報じられています。従来ユニオンショップ協定の閉鎖的労使関係を前提とした、金融の労使関係がすでに大きく変化しています。金融労組が、金融に働く労働者の権利と生活を守るためには、こうした金融産業における雇用構造=労使関係の劇的な変化にどう対応するかが問われます。この問題に対応するために、これまでの労働運動の経験と教訓に基本的な視点を求めて、当サイトにJMIU(現JMITU)の三木陵一氏の研究会報告を「研究会報告」にアップしました。ここでは三木氏の報告と、今日の金融労組との関連を提起します。

田中報告を開く JMIU(JMITU)三木氏の報告と金融労働運動の課題 (2018年8月14日up) 三木氏報告を開く JMIUにおける組織拡大の取り組みと非正規雇用労働者のたたかい(2018年8月9日up)


(調査レポート) メガバンクが相次いでリストラを公表 田中均 (2017 年12 月15 日up)

メガバンクが相次いでリストラ計画を公表しています。マイナス金利による金融機関経営の圧迫。IT技術、AI活用による新技術の導入、ビットコインなど「仮想通貨」による銀行業務への影響などなど様々に論じられています。都市銀行の従業員数がピークだったのは1977年で18万人を超えていました。それが2000年代半ばには9万人を割り込んでいます。1990年代後半以降の不良債権処理で従業員数の大幅削減の結果です。しかし銀行で働く労働者が減ったわけではありません。正規従業員が「外注化」の結果として関連会社の従業員と非正規労働者に置き換えられました。これはとりわけ大手銀行、メガバンクに顕著です。更なる銀行リストラは銀行経営やそこに働く労働者、地域社会に何をもたらすか。それを考える一端となれば幸いです。

調査レポートを読む (調査レポート) メガバンクが相次いでリストラを公表(2017 年12 月15 日up)

関連レポート 調査報告 「激変した金融労働者の雇用構造」 田中均 (2014年8月20日up)


アップルの空飛ぶ魔術―失われた2000億円の税収 合田寛(2017年6月22日up)

巨大多国籍企業が巨額の利益を上げながら、タックスヘイブンを使ってほとんど税金を払っていないことが国際的にも大きな問題となっています。アップルの税金逃れも多数の運動グループが指摘し批判しています。当金融・労働研究ネットワークの運営委員でもある政治経済研究所の合田寛氏がアップルのタックスヘイブンを使った税金逃れについて明らかにしています。合田氏はタックスヘイブンの税金逃れを一貫して追及し当金融・労働研究ネットワークの研究会でも積極的に報告しています。また「タックスヘイブンに迫る」新日本出版社 2014年、「これでわかるタックスヘイブン」合同出版2016年など著書を刊行されタックスヘイブン問題を追求されています。ここに紹介する「アップルの空飛ぶ魔術」は「公正な税制を求める市民連絡会」(宇都宮健児氏らが共同代表)のホームページに掲載されているものです。同ホームページはhttp://tax-justice.com/をクリック。「公正な税制を求める市民連絡会」は昨年10月29日にイギリスからタックス・ジャスティス・ネットワークの代表を招いてシンポジウムを開催しています。

「アップルの空飛ぶ魔術」は アップルの空飛ぶ魔術―失われた2000億円の税収 合田寛(2017年6月22日up) をクリック。

シンポジウムの内容はこちらをクリック。 集会報告「『財源がない』は本当か?」

 

 

 


日本におけるカジノ合法化の危険な影響 鳥畑与一 (2017年6月13日up)

昨年(2016年)12月、統合型リゾート(IR)整備推進法案(通称「カジノ法案」)が国会を通過しました。日本にカジノを解禁してカジノを中心とする大規模なリゾート導入を目指す政府は次のステップとして統合型リゾート(IR)実施法案の成立を目指しています。日本外国特派員協会(FCCJ)は2月28日のプレス・カンファレンスにカジノ解禁・推進を目指す木曽崇氏(国際カジノ研究所所長)、カジノ解禁の問題点を指摘する静岡大学の鳥畑与一教授を招き両者の主張を取材しました。鳥畑教授は特に統合型リゾートによるカジノ解禁の問題点を以下の5点明らかにしました。1、日本はギャンブル依存者など問題行動が他国に比しても高い比率にある。2、統合型リゾートによるカジノが日本経済の発達に寄与することはない。反対に地域経済を破壊し富裕層と貧困層の格差を拡大する。3、統合型リゾートのカジノが日本の地域住民をターゲットにする場合、統合型リゾート周辺の地域社会での「共食い」を引き起こす。それは日本に利益をもたらすことなくギャンブル依存症などの問題行動を増加させ、そのための社会的負担と経費を増大する。4、カジノの合法化はギャンブル問題を一層深刻にし、社会的コストを増大させる。5、統合型リゾートカジノはカジノギャンブルの中でも最も危険性の高いものである。それはより多くの家族をカジノに誘い込み、ますます多くの日本人をギャンブル依存症にしてしまい、社会を土台から破壊する。

鳥畑教授はカンファレンス冒頭での発言を通訳時間節約のために英語で行いました。発言は13表におよぶデータを活用して行われました。

発言原稿(英文)を読む  The dangerous effect of legalization of casinos in Japan(2017年6月13日up)


集会報告「『財源がない』は本当か?」

10月29日、東京港区で「『財源がない』は本当なのか?―3000兆円も眠るタックスヘイブンから格差社会、税制を考える」をテーマに集会が開かれました。「公正な税制を求める市民連絡会」が主催し、タックスヘイブンについて最先端の情報を収集して活動している国際組織タックス・ジャスティスネットワークから代表者のジョン・クリステンセン氏とシニアアドバイザーのクリシェン・メーター氏から報告を受けました。

全文を読む 表示・ダウンロード 集会報告「『財源がない』は本当か?」


最も危険な金融機関ランキング 高田太久吉

ウォール街に通じた研究者を多数擁し、ボラティリティ研究所をはじめ、かねてから金融システム改革の技術的・政策的問題に取り組んできたニューヨーク大学のスターンスクール(ビジネス大学院)は、ノーベル経済学賞受賞者のロバート・エングルの指導下で、ニューサウスウェールズ大学やローザンヌ大学の研究者の協力を得ながら、金融システムにとって危険な金融機関を数値的にランク付けする手法を開発した。その手法により、大手金融機関が次なる金融危機に遭遇した場合に予想される資本不足額を算定し、その大きさにもとづいて、米国の金融システムにとって最も重要かつ危険な金融機関のランキング(表)を作成した。

全文を読む表示・ダウンロード: 最も危険な金融機関ランキング 高田太久吉(2015年10月5日up)

 


足利銀行の不当な対応を許さない(2015年9月1日up)

銀行の貸し手責任を問う会は6月22日に東京で「中小企業・個人の元気を取り戻す―中小企業等金融円滑化法の出口戦略を語る」をテーマにシンポジウムを開催。元金融担当大臣の亀井静香氏、元総務大臣の原口一博氏を招き、経済ジャーナリストでデモクラTV代表の山田厚史氏をコーディネーターに市場競争万能原理に対する批判、中小企業金融のあり方を議論しました。ここに紹介するのは、経営が困難になる中で必死に事業再生を試み不動産売却で再建しようとした業者が、銀行の関連不動産会社を媒介することを強要され好条件での売却の機会を逃し、さらに銀行から競売開始の通知を突きつけられたという現実の告発です。

表示・ダウンロード: 告発 足利銀行の不当な対応を許さない(2015年9月1日up)