論文とレポート


講演紹介 日本の資本主義・社会のあり方を見つめ直そう 桑田富夫(2021年5月29日up)

全損保は、2020年11月14日、東京で賃金討論集会を開催。「日本の資本主義・社会のあり方を見つめ直そう」と題し、労働運動総合研究所代表理事である桑田富夫氏から講演を受けた。生協労連の委員長を長く経験した桑田氏は、講演で生協労連について、現在142単組6万5000人余の7割がパート、非正規であると説明。生協労連のパートの組織化運動は1970年代後半から本格化し「労組に縁のない主婦・女性が多いパートのなかまに声をかけ、労働組合でなくて茶話会でいいからパートの組織を作ろうということからはじめた」と、雇用構造が大きく変わった今日の労働組合にとって貴重な経験を紹介。また、
日本経団連の「経営労働政策特別委員会報告(経労委報告)」について「大企業の利益拡大しか見ておらず、そのために労働者をどう奉仕させるかという観点しかない」と指摘し、「日本型雇用システムの見直し」、「高度な付加価値の実現」などを説明するなかで「現実を無視し、経済の矛盾を深める財界の方針である」と厳しく糾弾した。

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全損保賃金討論集会記事参照。

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菅政権の地銀再編を考える 中島康隆委員長が解説(2021年4月25日up)

菅「地銀再編」は何を招くか

地域金融機関再編を後押しする銀行法改正案が今国会に提出され、地域金融再編が進められようとしています。地域金融再編をどう考えるべきか。中小企業の業者団体である全国商工団体連合会の「月刊民商」は、4月号で「菅『地銀再編』は何を招くか」をテーマに、金融労連の中島委員長と静岡大学の鳥畑与一教授の論文を掲載しました。中島委員長は地域金融機関に働く労働者として菅政権の「地域金融機関再編」の問題点を解説しています。全文を読む  菅政権の地銀再編を考える 中島委員長が解説(2021年4月25日up)


動画紹介 コロナ禍のホームレス女性殴殺事件の背景(2021年1月22日up)

インターネット放送局「デモクラシータイムス」は2017年4月から本格始動し、政治・経済・憲法・原発問題などをテーマに山田厚史(代表)、田岡俊次、荻原博子、早野透、佐高信、山岡淳一郎、池田香代子などが発信している。主にYouTubeで番組を公開し、チャンネル登録者は3万人を超えているとされ、大手メディアでは報じられないリベラルなニュース解説を行っている。昨年(2020年)4月から始まった「竹信三恵子の信じられないホントの話」では、非正規労働者など経済弱者、特に女性の直面している問題について当事者の声を紹介し、労働組合などに自らの運動を振り返る貴重なインパクトを与えている。2020年12月16日に配信された「路上女性殴殺事件の衝撃」では、昨年(2020年)11月16日に東京・渋谷区のバス停でホームレスの女性が、40代の男性に殴殺された事件を取り上げ、コロナ禍の女性の状況と、弱者に手を差し伸べる機能を失っている社会の在り方を告発している。この動画からは、2008年リーマンショック後の派遣切りに対応して取り組まれた「年越し派遣村」の時点での状況と2020年以降のコロナでの状況との違いが浮かび上がる。

動画の中で、生活保護の「扶養照会」の問題が出されている。1月18日(2021年)に召集された通常国会でも、扶養照会問題が取り上げられ、1月20日には立憲民主党の逢坂誠二議員が衆議院本会議で、1月22日には日本共産党の小池晃議員が参議院本会議で、扶養照会が生活保護申請のハードルになっていると指摘し、親族への照会を一時的にとりやめるよう、政府に迫った。Change.orgの「困窮者を生活保護制度から遠ざける不要で有害な扶養照会をやめてください!」への賛同は1月22日20時現在30,000を超えた。

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取材レポート 非正規労働者への差別是正で最高裁弁論(2020年9月23日up)

非正規労働者への差別処遇の是正を求めた労働契約法20条の裁判で、最高裁の弁論が開かれ、メトロコマース裁判、大阪医科大学裁判の最高裁判決は10月13日、日本郵政の判決は10月15日に出される。9月15日には、同日に行われたメトロコマースと大阪医科大学裁判の弁論の報告集会が参議院議員会館で開かれた。報告集会では最高裁判決後に、さらに非正規労働者への差別撤廃を目指していかに闘い続けるかが提起された。また、郵政ユニオンはこれまでの労働契約法20条裁判のたたかいをふまえて、今年2月に154名の労働者が原告となって第2次の集団提訴を行っている。雇用構造の大きな変化で多くの非正規労働者に低賃金が押し付けられ、人員削減では真っ先に雇止めにさらされている。この非正規労働者の要求を実現し組織化を進めることは、現時点で当面する労働組合の最重要課題のひとつというべきだろう。非正規労働者への差別処遇では、諸手当など格差において不合理とする判断がすでに確定しているものもある。最高裁判決での到達点を踏まえて、企業内外で非正規労働者にたたかいの到達点を周知し、要求実現に取り組み非正規労働者の組織化に取り組むことが求められている。

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調査レポート 従業員・労働者のコロナウイルス感染判明に 金融機関はどう対応したか(2020年6月19日up)

2020年の春は新型コロナウイルス感染の拡大、パンデミックの広がりで世界中が前年には予想もしなかった状況となった。ここでは、金融機関の職員・労働者の新型コロナウイルスに感染が判明した時点で、それぞれの金融機関がどう対応したかを検討する。新型コロナウイルスのように感染力が強く、死亡者も多数出る感染症に直面した時、いつどこで感染したかの情報を広く共有し合うことが、さらなる感染の拡大を防止するうえで重要なことは異論がないだろう。全国銀行協会は3月12日に「新型コロナウイルスへの対応に関する申し合わせ」を公表。その中で、金融機関の従業員等に感染が判明した場合には、「関係機関と連携しつつ、原則として速やかに公表するとともに、感染拡大の抑制に向け適切に対応する」としていた。顧客の信用を最も重視し、風評被害を恐れる金融機関が従業員の感染判明を直ちに公表するという申し合わせは、今後の感染症問題に対しても重要な先例となるだろう。調査レポートを開く 調査レポート 従業員のコロナ感染判明 金融機関はどう対応したか(2020年6月19日up)


動画紹介レポート 差別がコロナ感染を広げる (2020年5月23日up)

新型コロナウイルス感染拡大を防ぐために、緊急事態宣言が出される中で、非正規労働者や小規模自営業者など収入の道を絶たれたり、大幅な収入減少に見舞われています。背景には、この間の新自由主義的改革の下で雇用破壊が進み、格差が拡大してきたことがあげられます。国際労連(ITUC)と提携して活動している、国際産業別労働組合(GUF)の9組織の1つであるIUF(国際食品関連産業労働組合連合会 260万人)は、新型コロナウイルス感染拡大=パンデミックに立ち向かうにあたって、新自由主義経済との対決を鮮明に提起しています。IUFのウエブサイトでは今年のメーデーに当たってのメッセージで「昨年、チリで大衆抗議行動に際してビルの壁に『我々は“正常”に戻ってはならない。なぜなら“正常”こそを問題とするべきだから』というスローガンが映し出された。今、このスローガンが世界中に響き渡る。新型コロナウイルス感染拡大は、まさに“正常”ということの過酷さを照らし出した」と訴えました。IUF May Day is our day, even under lockdown

わが国で新型コロナウイルス感染拡大防止に一斉休校が要請された時、学校の休校にともなって保護者が就労できないことに対する補償が出されましたが、その対象から、当初風俗関連業界は当然のように除外されました。この対象除外は後に訂正されますが、風俗関連業界が何の説明もなく除外されることの中にも、IUFの訴える「“正常”ということの過酷さ」が示されます。インターネットメディアのデモクラシータイムスが4月から始めた番組「竹信三恵子の信じられないホントの話」は、風俗業界の労働者の権利確立に取り組むキャバクラユニオンの当事者をゲストにこの差別問題を考えています。

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レポート コロナ危機口実の600人「退職」強要許さない(2020年4月28日up)

東京都内のタクシー会社ロイヤルリムジングループは、新型コロナウイルス感染拡大を口実に従業員600人全員を退職に追い込もうとしました。これに対して、グループ内の自交総連・目黒自動車交通労働組合(全労連)は、脱法的な退職強要を批判し、雇用を守れと要求してたたかってきました。4月24日、 会社は団体交渉で同労組に対し、退職強要を撤回し、雇用を維持することを表明。自交総連本部発行の「自交労働者情報」第17号(2020年4月27日発行)は、この経過を報じて「会社の身勝手なやり方をはねかえす成果」としています。

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調査レポート  新型ウイルス感染拡大=パンデミックと労働組合 イタリアの闘い(2020年4月12日up)

新型コロナウイルス感染拡大が世界中に広がっています。金融・労働研究ネットワークでは、2月11日に「レポート 新型コロナウイルス感染拡大と労働組合の対応」を当ホームページにアップして、その時点での海外の労働組合の取り組みを紹介しました。この時点ではまだWHOもパンデミック(感染の世界的大流行)という言葉を使っていませんでしたが、その後文字通りのパンデミックとなってしまっています。この問題は、中国から始まってヨーロッパに広がり、労働組合もそれぞれの国で取り組みを強めています。インターネットサイト「LabourStart」は毎日の世界の労働運動を幅広く紹介していますが、「COVID-19(=新型コロナウイルス感染)」特別ページを設けています。同サイトの英語版のページだけでも、連日膨大な各国の取り組みが紹介されています。海外の労働組合の取り組みを見ていると、レーガン、中曽根、サッチャーによる1980年代以来の経済政策が作り出した社会の在り方が問われていること、その社会の在り方の見直しが求められていることを痛感します。昨日迄、世界で一番死者数の多かったイタリアで(本日、死者数はアメリカが最多となった)、労働組合はストライキでたたかっています。パンデミックのさ中になぜストライキなのか。ご一読ください。合わせて、2月11日アップの「レポート 新型ウイルス感染拡大と労働組合の対応」および新日本出版社刊「経済」5月号「新型コロナ拡大と労働組合」(田中均)をご参照ください。今後さらに、感染拡大の止まらないアメリカなどで労働者はどうたたかっているのかフォローしていきます。

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報告 公契約条例制定と最低賃金制度改善運動の意義と課題 永山利和 (2020年3月7日up)

地方自治体が各種業務を民間事業者に委託する際に、その委託業務に伴う労働条件等を地方自治体の条例で定める、公契約条例制定の運動が進められています。この取り組みは、最低賃金引き上げと連動して、地域内の労働条件改善を進めるもので、各地に広がっています。東京の中央区労働組合協議会は東京の中央区における公契約条例制定を目指し「公契約条例・最賃学習交流集会」を開催しています。昨年( 2019 年 5 月 24 日)の学習交流集会では、東京世田谷区の「公契約条例適正化委員会」副会長の永山利和氏(元日本大学教授)から報告を受け、東京地評、全建総連千代田・中央・港地区協、全印総連東京地連、東京公務公共一般労組、全国一般中部地区協から取り組みと実態報 告を受けています。永山氏の報告は、条例制定運動に取り組み、公契約条例の制定を実現した後にも、条例の目標の実現を目指して続けられていることが理解されます。この経験は地域の労働条件改善にとどまらない、地域住民、中小零細業者、労働組合などが地域経済の活性化に連携して協働する可能性を示しています。ここでは永山利和氏の報告を紹介します。本稿は金融・労働研究ネットワーク事務局で筆耕原稿を作成し、報告者の丁寧な校閲を受けました。なお中央区労協は今年( 2020 年) 2 月 19 日にも同学習交流集会を開催しています。また新日本出版社の「経済」最新号(2020年4月号)でも永山氏が公契約条例の意義を解説されています。報告を読む 報告 公契約条例制定と最低賃金制度改善運動の意義と課題(2020年3月7日up)


レポート 新型コロナウイルス感染拡大と労働組合の対応(2020年2月11日up)

―海外の公務員労組を中心に―

新型コロナウイルスの感染拡大おさまらず、感染者が拡大し続け、死亡する人も増え続けています。労働組合はこれにどう対応しているか、インターネットで海外労働組合のホームページやメディアのウエブサイトを概観しました。前回のサーズの時にも、海外労組は組合員の権利を守る視点から、取り組みを行っていました。海外の労働組合の動向を概観する場合、国際労働運動のウエブサイトLabourStart英語版のリサーチから始めています。coronavirusで検索しても2月初めには、かぎられた情報でした。しかし、日が進むにしたがって数が増えてきています。イギリスのUNITEやカナダの公務員労組は、ウイルス感染拡大の防止を要求すると同時に、組合員を守る視点から見解や要求を出しています。カナダの公務労働者をも組織するPSACは「コロナウイルスと職場の権利」を公表し、ウイルス感染が拡大する中では、体調不良の労働者には「自宅待機」を奨励することを雇用主に求めています。また、カナダの公務員労組CUPEは緊縮財政の中で、公共衛生維持の公的体制が脆弱になっていることを批判しています。人間社会が存続するために何が必要なのか。新自由主義的経済政策を根本的に問い直すことが求められています。香港では中国本土との往来の完全封鎖をを要求して、医療労働者が2月3日にストライキに突入しています。ストライキは2月7日に組合員投票で中断します。この中断決定を公表するときに、労働組合の委員長(女性)が涙を浮かべて、患者や影響を受けた人々に謝罪したと報じられています。このストライキには背景に、中国本国政府に従順な香港政府に対する不信感がうかがえます。レポートを開く 新型コロナウイルスと労働組合の対応(2020年2月11日up)