研究会報告


報告レジュメ アベノミクスの破綻と地域金融機関の再編 鳥畑与一

金融・労働研究ネットワークは7月14日に「アベノミクスの破綻と地域金融機関の再編」をテーマに研究会を開催し、静岡大学の鳥畑与一教授から報告を受けました。鳥畑教授は地域金融機関の経営の困難の原因が、アベノミクスとりわけマイナス金利政策など金融政策の失敗にあることを見ようとしないで、地域金融機関の本来の役割発揮とは逆行した地域金融機関の再編を進めようとしていることを批判。金融政策の行き詰まりを金融行政で突破しようとしていると指摘。安倍政権の成長戦略を地域金融機関の機能強化(新陳代謝促進)で支え、県境を越えた広域での合併=スーパーリージョナルバンク=大規模地域金融機関を作り出そうとしているとしました。そして、それは問題の真の解決方向ではなく悪循環を一層促進するだけではないのかと疑問を提起しました。鳥畑教授には2017年3月5日にも報告いただいています。その時の報告と報告レジュメを合わせてご参照ください。

報告レジュメを開く 報告レジュメ アベノミクスの破綻と地域金融機関の再編 鳥畑与一 (2018年8月23日up)

2017年3月5日報告を読む マイナス金利政策と中小金融機関 金融庁の金融行政との関連で(2017年12月14日up)

2017年3月5日報告レジュメを開く 報告レジュメ マイナス金利政策と中小金融機関(2017年3月31日up)


JMIUにおける組織拡大の取り組みと非正規雇用労働者のたたかい

大手銀行、とりわけメガバンクは雇用構造が大きく変化し非正規雇用労働者が銀行本体の正規雇用労働者に匹敵する存在となっています。これは、ユニオンショップ協定で雇用を保証され、同時に企業帰属意識に呪縛された行員が組織する企業内組合と経営者の労使関係の外側に、従来の労使関係では解決できない労使関係が非常に大きなウエイトをもって存在していることを意味します。今後に予定されている大手銀行のリストラ計画にどう対応するか。これまでの企業内労使関係の枠を超えた構えが求められます。その構えを考える基本は、すべての労働者を仲間と考え組織化の対象と考える「闘う」労働運動の原則にあります。金融・労働研究ネットワークでは2013年7月に当時のJMIUの三木書記長に「JMIUにおける組織拡大の取り組みと非正規雇用労働者のたたかい」をテーマに報告していただきました。報告から時間が経過していますが、今打ち出されているメガバンクのリストラ計画にどう対応するかを検討するとき、産業の条件は全く違いますが、総評全国金属以来のたたかう伝統を引き継いで闘っている経験は今後の闘いに重要なヒントを提示しています。

報告を開く JMIUにおける組織拡大の取り組みと非正規雇用労働者のたたかい(2018年8月9日up)


問題提起レジュメ メガバンクリストラと金融労働運動の課題

金融・労働研究ネットワークでは、2月10日に「メガバンクリストラと金融労働運動の課題」をテーマに定例研究会を開催。当ネットワーク事務局の田中が問題提起を行い議論しました。田中からの問題提起は、バブル崩壊以降の不良債権処理の中でとりわけメガバンクでは非正規労働者と事務子会社など関連会社の従業員が大きな比重を占めるようになっていることを指摘。雇用構造が大きく変わった中で、特定業務部門の再編成・廃止等に際しては、その部門丸ごとの雇止めが生じうることを指摘。現にこれまでも部門丸ごとの雇止めが行われてきたことを明らかにしました。正規従業員主体の雇用構造の下でのリストラでは、他部門への配置転換、出向、そして退職勧奨などが行われましたが、窓口テラーや後方事務、センターにおける事務処理など個別の業務ごとの雇用となっている非正規労働者に対しては業務の廃止・終了が雇用の終結で処理されかねません。そして、正規従業員が3割から4割台になっているメガバンクでは、それ以外の大量の労働者が労働組合に未組織状態になっています。こうした問題に労働運動はどう対応していくべきかに直面しています。

問題提起レジュメを読む 問題提起レジュメ メガバンクリストラと金融労働運動の課題 田中均 (2018年3月11日up)


報告レジュメ・資料「中小企業憲章・振興基本条例と地域金融」瓜田靖(2018年2月25日up)

金融・労働研究ネットワークは1月14日に「中小企業憲章・振興基本条例と地域金融」をテーマに研究会を開催し、中小企業家同友会の瓜田靖氏から報告を受けました。瓜田氏は1997年以降に広がった金融機関による貸し渋り貸しはがしに対して、アメリカの地域再投資法にヒントを得て中小企業家同友会が取り組んだ「金融アセスメント法」制定運動の経過を説明。その取り組みの中から中小企業憲章制定、中小企業振興基本条例制定運動へと発展したことを詳しく報告されました。当日配布されたレジュメと資料では詳しい説明とともに図表1「金融機関・信用保証協会との連携などの状況」図表2「中小企業振興基本条例の制定一覧」がつけられそれぞれの地域の金融機関との連携、自治体に基本条例制定状況が把握でき各地での取り組みの参考になります。合わせて活用ください。

報告レジュメ・資料を読む 報告レジュメ・資料 中小企業憲章・振興基本条例と地域金融 瓜田靖 (2018年2月25日up)


報告レジュメ 現代資本主義における格差と経済危機 高田太久吉 (2018年2月25日up)

金融・労働研究ネットワークは10月15日に「現代資本主義における格差と経済危機」をテーマに研究会を開催し、当ネットワーク代表の高田太久吉氏から報告を受けました。高田代表はリーマンショックを契機として発生した金融恐慌に象徴される現代の金融危機と、古典的な過剰生産恐慌の違いを確認。実物経済における過剰生産から恐慌が発生することは起きない中で、「貨幣資本の過剰蓄積」の状態化が金融危機を頻発させていると指摘しました。報告の中では「フォーブズ誌」長者番付トップがビル・ゲイツ氏で資産総額が8兆4800億円に達するなど紹介し、現代の超富裕層は企業経営者などが大勢を占め、寄生的な資産家ではないことにも触れ、その資産の大部分がが証券そのほか架空資本の形で蓄積されていて、今日の資本主義的生産関係の下でのみの富にすぎないことをも指摘。報告を受けた後の討論では研究会参加者から高田代表の近著「引き裂かれたアメリカ」についての書評や関連する論文の紹介があり、活発の議論が行われました。

報告レジュメを読む 報告レジュメ 現代資本主義における格差と経済危機 高田太久吉 (2018年2月25日up)


メガバンクの非正規問題―三菱東京UFJ銀行を中心に 浦野弘 (2018年1月4日up)

この報告は2017年7月に行われた定例研究会における報告です。金融ユニオンは雇止めなど不当な攻撃を受けた非正規労働者を支援して、金融労連や他の金融労組と連携して要求実現にたたかってきました。「(調査レポート) メガバンクが相次いでリストラを公表」(2017 年12 月15 日up)で指摘しましたが、メガバンクは不良債権処理の中で正規従業員を大量の非正規従業員と関連子会社従業員に置き換えてきました。今後のリストラは労働者の中で大きな比重を占める非正規労働者・関連子会社労働者の処遇をどうするかが重大な問題となることが懸念されます。三菱東京UFJ銀行を中心とする非正規労働者のたたかいは銀行の非正規労働者の位置づけを示すものとなっています。同時に金融ユニオンのたたかいの経験は粘り強い取り組みで要求を実現する可能性も示しています。日本全体としても非正規労働者の比率が非常に多くなり、労働組合の主要な課題が非正規労働者のたたかいをいかに支えるかあります。浦野氏の報告は日本を代表するメガバンクで、非正規労働者の賃金が最低賃金によって規定されていることを明らかにしています。またシステムの変更などに際しては業務グル-プが丸ごと雇止めとされています。それに対して金融ユニオンが社会的に訴え、国会でも取り上げられるなど粘り強いたたかいによって要求を実現する可能性も示しています。大規模なリストラが予想されるメガバンクに対して労働運動はいかに構えるべきか。示唆に富む経験報告となっています。

報告を読む メガバンクの非正規問題―三菱東京UFJ銀行を中心に (2018年1月4日up)  報告レジュメ 金融・労働研究ネットワーク研究会報告レジュメ

資料1-1 資料1-1全銀協財務分析資料より、従業員数推移  資料1-2 資料1-2三菱東京UFJ銀行従業員推移  資料2-1 資料2-1非正規労働者の賃金実態  資料2-2 資料2-2参考  資料3 資料3無期雇用化にともなう制度改善の内容

参考1 調査報告 「激変した金融労働者の雇用構造」 田中均 (2014年8月20日up)  参考2 金融商品販売 目標未達成で解雇は「監督指針違反」


研究会報告 マイナス金利政策と中小金融機関ー金融庁の金融行政との関連で 鳥畑与一 (2017年12月14日up)

これは2017年3月5日の定例研究会での報告を、事務局で筆耕したものです。文章上の責任は事務局にあります。マイナス金利政策と金融行政の転換をどう見るか。報告レジュメと合わせて活用してください。

報告を読む マイナス金利政策と中小金融機関 金融庁の金融行政との関連で(2017年12月14日up)


報告レジュメ「マイナス金利政策と中小金融機関―金融庁の金融行政との関連で―」鳥畑与一(2017年3月31日up)

日本銀行のマイナス金利政策が中小企業金融機関に影響を及ぼしています。3月5日の研究会では「マイナス金利政策と中小金融機関―金融庁の金融行政との関連で―」をテーマに静岡大学の鳥畑与一教授に報告していただきました。鳥畑教授は中央銀行による金利を主とする金融政策と、金融庁による金融機関経営に対する金融行政の相互への影響の視点から解説しました。不良債権問題が深刻だった90年代末から2000年代初期にかけて日銀は超低金利政策で金融機関の貸出増加・企業の投資促進を図りました。同時に金融行政は不良債権処理を名目に金融検査マニュアルによる個別金融機関の「経営健全化」を強行に推し進めました。「経営健全化」は貸し渋り・貸しはがしを引き起こし中央銀行による超低金利・投資促進政策と逆方向に作用する政策展開となりました。今、日銀はマイナス金利政策を推し進めていますが、長期にわたる超低金利政策の後に実行されたマイナス金利政策は金融機関の預金・貸し出しの利ザヤを極度に縮小し、貸出による収益が上がらなくしています。これはとりわけ地域金融機関の経営を圧迫すると同時に、資金調達コストを下回りかねない利ザヤは融資を抑制しています。他方で金融庁はアベノミクスの成長戦略に対応して成長する見込みのある企業への融資拡大(=市場から退出すべき企業を退出させる)を進める金融行政を推進。賃金の引き上げ・地域中小企業の経営安定で消費購買力を増大させ企業活動の活発化=投資拡大・資金需要の増大という方向ではなく、経済の現実から遊離した中央銀行の金融政策と、金融庁による金融行政の矛盾を明らかにしました。当日の鳥畑教授の報告は多岐にわたり、以上は金融・労働研究ネットワーク事務局による要旨要約です。鳥畑教授の報告レジュメをご参照ください。

レジュメを読む 報告レジュメ マイナス金利政策と中小金融機関(2017年3月31日up)


(報告要旨)アメリカ社会で何が起きているのか (2017年3月31日up)

2017年はアメリカトランプ政権の誕生以降、連日のように同政権の動きが報じられています。この報告要旨は2016年7月3日に行われた研究会での報告要旨ですが、トランプ政権登場の背景にあるアメリカ社会の変化を分析しています。報告者の当金融・労働研究ネットワーク代表高田太久吉氏はインターネットサイト「Takuyoshi Takada’ s Home」(http://takuyoshi.sakura.ne.jp/)掲載の「定点観測(25)」で関連テーマについて解説しています。また雑誌「経済」2017年1月号に「2017世界経済の動向①」として「アメリカ社会に何が起きているか」を報告。そして中小企業家同友会全国協議会による「年頭 中小企業経営の展望レポート第6号」に「アメリカ大統領選挙結果に見る政治・経済の変化」を掲載しています。中小企業家同友会の「年頭…レポート」では高田代表のレポートに合わせて「グローバル化の中のEUとEU中小企業政策の試行錯誤、英国の『離脱』の持つ意味」(三井逸友氏)、「日本での“アベノミクス”の行き詰まりと、地域中小企業」(吉田敬一氏)が報告され、三氏による討論が掲載されています。こちらのレポートはインターネットサイトhttp://www.doyu.jp/research/issue/outlook_report2017.pdfでダウンロードできます。

報告要旨を読む  (報告)アメリカ社会で何が起きているのか (2017年3月31日up)


アベノミクスの中小企業政策と信用保証制度改革の問題点 鳥畑与一(2016年6月14日up)

信用保証制度の見直しの検討がなされています。金融・労働研究ネットワークでは、信用保証制度・信用補完制度について昨年11月に千葉商科大学の齋藤壽彦教授から「信用補完制度の現状と課題」の報告を受け、今年1月31日に静岡大学の鳥畑与一教授から「アベノミクスの中小企業政策と信用保証制度改革の問題点」について報告を受けました。ここでは行政サイドで進められている信用保証制度見直しの問題点をどう見るかについて視点を提示された鳥畑教授の報告レポートを紹介します。本報告は当日の録音の文章化し鳥畑教授の校閲を経たものです。あわせて3月15日にアップ済の報告レジュメをご参照ください。

報告を読む 「アベノミクスの中小企業政策と信用保証制度改革の問題点」(2016年6月14日up) 報告レジュメ・資料 「アベノミクスの中小企業政策と信用保証制度改革の問題点」(2016年3月15日up)