ワクチン接種の広がりで、新型コロナウイルス感染は縮小するかと思っていたら、海外では感染縮小に伴う経済活動の正常化が、新たな感染拡大となっている。さらに、新たにオミクロン株なる変異株が広がり始め、感染拡大への警戒が求められている。高田代表のこのコラムでは、ウイルス感染拡大抑制策とGo To Travel などの経済振興策が矛盾することを議論の入り口に、そもそも「経済を廻す」ということはどういうことか提起する。一読して思うのは、この間、政権が鳴り物入りで打ち出した政策が日本全体の経済成長につながらなかった現実である。経済成長はしなかったが、大企業や富裕層にはますます「遊休」資産が蓄積されている。他方で賃金は下がり続け、非正規雇用労働者や労働者保護法制の保護の対象とさえならないギグワーカー、フリーランスなどが増大。大企業や富裕層に蓄積されている「遊休」資産を、フードバンクに依拠しなければならない困窮している人々も含めて「普通に働いている」人々が「普通に暮らせる」ための投資にまわるなら、社会的総需要の拡大、経済の正常化をもたらす。その変化を作り出す力はどこにあるのか。拡大する格差の底辺で理不尽な処遇にあえぐ人々と広く連帯し、その人々の要求実現をたたかいの中心に位置づけるべきではないか。視野を地域全体に広げ、既存の組織の枠を大きく乗り越え、地域と職場で、非関労働者、不安定就労者との連携を広げることが求められている。(均)
メッセージとコラム
コラム 価値論に始まり、価値論に終わる 高田太久吉 (2021年10月24日up)
当金融・労働研究ネットワークの高田太久吉代表によるコラム「価値論に始まり、価値論に終わる」です。私(田中)は、法学部を卒業した後で経済学を本格的に勉強しようと決意しました。卒業と同時に学生時代の過労がたたり入院・手術を受けたこともあり1年間、大学院への受験勉強で資本論に取り組みました。高田代表のコラムに当時を思い起こします。経済・哲学手稿だったか国民文庫の「ドイツイデオロギー」に収録されていた「フォイエルバッハへのテーゼ」であったかそれとも「資本制生産様式に先行する諸形態」だったか、定かではないのですが「類的本性」とか「共同体」という概念が強く印象に残っています。当時、平田清明氏の所説をめぐり論争が広がっていました。新自由主義が、経済思想として人々を分断し変質させていることを毎日の出来事で強く感じる今、高田代表のコラムに労働価値説が人間と人間の関係を考え、人間の社会がどこへ向かうのかを考えさせられます。今年当金融・労働研究ネットワークのホームページにアップした本の紹介 「人新生の『資本論』」は、ポストコロナの手引き書 齊藤学 2021年1月10日upは今年最も多くダウンロードされています。こちらもぜひご参照ください。
コラム オリンピック憲章はどこへ 小林寿太郎 (2021年8月8日up)
新型コロナウイルス感染が急速に拡大し、多くの人々が不安をいだき、中止を求める声が出される中で東京オリンピック開催が強行されました。小林寿太郎さんが57年前の東京オリンピックと、今回の東京オリンピックへの思いを投稿してくれました。57年前、小林さんは小学校6年生で、駒沢競技場で毎朝夕各国の旗をあげおろししたとあります。田中は、中学3年生でテレビで当時日本の得意競技だった体操の小野喬選手のとりわけ鉄棒競技を夢中になって応援していました。応援するだけでは飽き足らず、中学校のグラウンドで、同級生と見よう見まねで大車輪や鉄棒からの宙返りに挑戦しました。そんな経験を持つ我々にとり、今回の東京オリンピックは全く異質のものです。コロナ感染拡大の懸念を持つ人々の声に、誰がオリンピック中止の権限を持っているのか、納得できる説明がないままの開催強行、既成事実化が進められました。それは日本国内の政治体制のウソと無責任横行にだけ問題があるのではなく、IOCの体質にも問題があることが明らかになっています。今回の東京オリンピックはオリンピックへのイメージを大きく損ないました。国際労連(ITUC)やユニグローバルユニオン(UNI)は、5月段階で東京オリンピック実施要項(protocols)やプレイブックの問題点を指摘して、スポーツ競技団体やその労働組合も参加しての見直しを求めていました。ITUCがオリンピック実施要綱の見直しを求める 今後、「スポーツを通してすべての国友好と親善を築く」という精神にふさわしいオリンピックを如何に再構築するかが問われています。(金融・労働研究ネットワーク 田中)
コラム本文を読む コラム オリンピック憲章はどこへ 小林寿太郎 (2012年8月8日up)
コラム ITUCがオリンピック実施要項の見直しを求める (2021年7月23日up)
東京オリンピックが開催されます。新型コロナウイルス感染拡大がさらに不安な状態の中で、開会式をはじめ主要な競技が無観客という異例の開催となりました。国際労働組合総連合(ITUC)や、ユニグローバルユニオン(UNI)などは、今回の東京オリンピックの実施要項やプレイブックの問題点を指摘して、選手団体も参加する協議を行うことを要求していました。日本国内でのオリンピック開催をめぐる議論は、感染拡大の防止が中心となっていました。ITUCやUNIからの発言も、感染拡大防止が中心ですが、論点は参加選手とサポートスタッフの声を、大会運営、感染防止に反映させるところに置かれています。IOC(国際オリンピック委員会)は参加選手にコロナ感染を含めて、想定されるリスクは参加選手の側の自己責任とし、その同意をオリンピック参加の条件としています。また、日本政府はバブル方式を採用し、参加選手たちは「バブル」で包まれ一般との接触が遮断されるので、仮に選手の中に感染が生じても「バブル」の外には広がらないと説明しています。
7月21日に、インターネットでニュース配信しているHUFFPOSTの日本語版は、「 アメリカ女子体操チーム、選手村を『脱出』しホテル宿泊へ。『選手の安全を管理』」というニュースを配信しました。HUFFPOSTはこのニュースに寄せられたコメントを紹介しています。その中に「米国選手は『自身の安全を保つため』と言っているけれど、僕は『それって建前だよね?本音は、好きなときに好きなものを食べたい!世界的に有名な日本のコンビニにも行きたい!大会組織委に隠れてサイトシーイングもしたい!だろ?』だと思う」というのがあります。このコメントはITUCやUNIやそのほかの専門機関が、現状としてのワクチン接種の限界、特に若年層の多い体操競技を想定した分析・提案していたことが日本ではほとんど理解されていないことを示しています。
ITUCが紹介する「ニューイングランド医学レポート」は、ワクチン接種について、先進国を含めて多数の国で「15歳から17歳の青少年は接種を受けることができず、15歳以下でワクチン接種を受ける国はさらに少ない。体操選手や水泳選手、10歳代の競技参加者はほとんどがワクチン接種を受けることができない」と指摘。UNI傘下の世界選手協会は「宿泊施設について、部屋を複数人数で共有することは他のアスリートやチームメイトへの感染確率を非常に大きく高める」として「一人一部屋」を主張し「ダイニングエリア、ジム、ロッカールームそのほかの共有スペースのディスタンス方法が明確にされていない」点を問題にしています。本文を開く コラム ITUCがオリンピック実施要項の見直しを求める (2021年7月23日up)
HUFFPOST記事リンク「 アメリカ女子体操チーム、選手村を『脱出』しホテル宿泊へ。『選手の安全を管理』」
コラム バイデン政権は新自由主義を転換させるか (2021年6月22日up)
アメリカのバイデン大統領はこれまでの企業減税政策を180度転換して、企業、富裕層への増税を打ち出した。労働組合政策でも歴代大統領の中で、最も親労働者的との評価もある。バイデン政権はレーガン・サッチャー以来の新自由主義政策を転換させうるか考える。
動画紹介 最低賃金引上げ 全労連が会見 日テレNEWS24が報道(2021年6月13日up)
6月11日、全労連・国民春闘共闘委員会は厚生労働省で会見し、最低賃金の水準で働く労働者の実態を訴え、全国一律の最低賃金・時間給1500円をめざして今年の改定で大幅に引き上げ、現状の大幅な地域格差の縮小を求めた。この会見は日本テレビの「日テレNEWS24」で報道され、マイクロソフトのニュースサイト(msn)でも配信された。配信されたのは1分7秒の簡潔な動画で「議論本格化を前に“最低賃金引き上げ”訴え」のタイトルで「今年の最低賃金の引き上げの議論が本格化するのを前に、最低賃金に近い時給で働く労働者らが引き上げを訴えた」と紹介。全文を読む 動画紹介 最低賃金引上げ 全労連が会見 日テレNEWS24が報道(2021年6月13日p)
関連記事 労働組合「見える化」にSNS発信
メッセージ 公正な税制を求める市民連絡会が対話集会(2021年6月11日up)
6月7日(月)、公正な税制を求める市民連絡会は衆議院第2議員会館で「国会議員との対話集会 コロナ禍で拡大する格差・貧困問題に立ち向かう! ~ 市民の立場から税制・財政を考える ~」を開催。集会にはZOOM参加を含め150名が参加した。
集会では、司会の雨宮処凛氏がコロナ禍で困窮する人が増加する一方で、株価が30年ぶりの高値を更新し格差が一層拡大していると指摘。同市民連絡会共同代表の宇都宮健児氏は米バイデン大統領が小さな政府を目指す新自由主義政策から、国家が役割を果たす大きな政府への転換を提起し、大企業や富裕層に応分の税負担を求める税制改革を打ち出したと紹介。G7財務担当大臣会議でも、世界共通の法人の最低を税率を15%にして、法人税の引き下げ競争を終わらせる声明が出されたとし、我が国においても税制の見直しの議論を進めることを訴えた。全文を読む 公正な税制を求める市民連絡会が対話集会(2021年6月11日up)
公正な税制を求める市民連絡会リンク国会議員との対話集会
労働組合「見える化」にSNS発信(2021年5月5日up)
非正規労働者が労働者の40%を占め、さらにウーバーイーツなどギグワーカー、インデペンダント・コントラクターと呼ばれる雇用によらない「労働者」が創出されている。こうした動きに対して、働くものの権利を確立しようとするたたかいがグローバルに取り組まれている。4月14日の全損保の春闘決起中央集会で講演した国民春闘共闘の黒澤事務局長は労働組合の「見える化」にSNS発信の活用を呼びかけた。雇用構造が大きく変化する中で、企業の中で最も不安定な人々との連携を広げるためには、地域社会での労働組合の「見える化」が求められる。企業内の密室で行われる不正や権利侵害とたたかう労働組合の「見える化」を進め、不安定雇用の人々に労働組合の存在を「見える化」するためにもSNS発信は重要な取り組みとなりうる。
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本の紹介 「人新生の『資本論』」は、ポストコロナの手引き書 齊藤学 2021年1月10日up
当金融・労働研究ネットワークの研究会の齊藤学氏に、集英社新書「人新生の『資本論』」齊藤幸平著への熱い思いを書いていただきました。齊藤学氏のマルクスやエンゲルスへの理解の深さが伝わってきます。新型コロナウイルス感染の世界的流行=パンデミックはまだその収束の見通しが立たない状況です。論評の中でも書かれていますが、このパンデミックはまさに新自由主義の行きつく先を露にしています。齊藤幸平氏の本書はマルクスの晩年の研究が、今日の資本主義の破たんを見越していたこと、その破綻にいかに対処すべきかを示唆していたことを示します。
コラム 「パンデミックが終わっても元の世界には戻れない」合田寛 2020年12月24日up
パンデミックのさなか、暗いトンネルの先を見つめる目も必要。コロナ後の世界はどう
変わるのか…。当金融・労働研究ネットワークの会員でもある合田寛氏が、欧州の代表的知性の一人と言われるジャック・アタリがロックダウンの中で考えた思索「命の経済」を紹介。本文を開く
合田寛 ジャック・アタリ「命の経済」紹介 2020年12月24日up