日本銀行のマイナス金利政策が中小企業金融機関に影響を及ぼしています。3月5日の研究会では「マイナス金利政策と中小金融機関―金融庁の金融行政との関連で―」をテーマに静岡大学の鳥畑与一教授に報告していただきました。鳥畑教授は中央銀行による金利を主とする金融政策と、金融庁による金融機関経営に対する金融行政の相互への影響の視点から解説しました。不良債権問題が深刻だった90年代末から2000年代初期にかけて日銀は超低金利政策で金融機関の貸出増加・企業の投資促進を図りました。同時に金融行政は不良債権処理を名目に金融検査マニュアルによる個別金融機関の「経営健全化」を強行に推し進めました。「経営健全化」は貸し渋り・貸しはがしを引き起こし中央銀行による超低金利・投資促進政策と逆方向に作用する政策展開となりました。今、日銀はマイナス金利政策を推し進めていますが、長期にわたる超低金利政策の後に実行されたマイナス金利政策は金融機関の預金・貸し出しの利ザヤを極度に縮小し、貸出による収益が上がらなくしています。これはとりわけ地域金融機関の経営を圧迫すると同時に、資金調達コストを下回りかねない利ザヤは融資を抑制しています。他方で金融庁はアベノミクスの成長戦略に対応して成長する見込みのある企業への融資拡大(=市場から退出すべき企業を退出させる)を進める金融行政を推進。賃金の引き上げ・地域中小企業の経営安定で消費購買力を増大させ企業活動の活発化=投資拡大・資金需要の増大という方向ではなく、経済の現実から遊離した中央銀行の金融政策と、金融庁による金融行政の矛盾を明らかにしました。当日の鳥畑教授の報告は多岐にわたり、以上は金融・労働研究ネットワーク事務局による要旨要約です。鳥畑教授の報告レジュメをご参照ください。
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